相手よりも、相手の可能性を信じる

昨日、愛読している本の

以下のエピソードが

大変心に響いたので

ご紹介させて頂きます。

 

 

_____________

私が学習塾講師になって間もない頃、

S君という中学3年生の生徒が

入塾してきました。

 

 

無口で少し変わった子でした。

授業の時にノートを出さない。

数学の問題は

テキストの余白で計算する。

だから計算ミスばかりしているのです。

 

 

たまりかねた私は、ある時、

彼を呼び出して言いました。

 

 

「ノートはどうした」

 

 

しかし、S君は黙ったまま

うつむいています。

 

 

次の日は必ずノートを

持ってくるように約束させましたが、

それでも彼はノートを

持ってきませんでした。

 

 

私はカチンときて

思わず怒鳴りつけました。

 

 

「反抗する気やな。

 よし分かった。

 先生がノートをやるわ」

 

 

私は500枚ほどの

コピー用紙の束を

机にボンと投げ出しました。

 

 

するとS君は

「ありがとうございます」と

お礼を言うのです。

 

 

 

夏になると、周囲の生徒から

S君に対する苦情が

寄せられるようになりました。

 

 

彼がいつも着ているヨレヨレの

Tシャツとジーパンが

臭うというのです。

 

 

この時も私は彼を呼んで

毎日着替えるよう言いましたが、

それからも服装は相変わらずでした。

 

 

私は保護者面談の時、

S君の母親にこのことを

話しておかなくてはと思いました。

 

 

生活態度を改めるよう

注意を促してほしいと

訴え掛ける私に、

母親は呟くように

話を始めました。

 

 

「あの子は小学校の頃から、

 この塾に通ってK学院に

 進学するのが

 ずっと夢だったんです。

 でも先生、大変申し訳ないのですが、

 うちにはお金がありません……」

 

 

S君が早くに父親を亡くし、

母親が女手一つで彼を

育て上げてきたことを

知ったのはこの時でした。

 

 

塾に通いたいという

S君をなだめ続け、

生活を切り詰めながら

なんとか中学三年の中途で

入塾させることができたというのです。

 

 

私はしばらく頭を

上げることができませんでした。

 

 

S君に申し訳なかったという

悔恨の念がこみ上げてきました。

 

 

そして超難関の

K学院合格に向けて

一緒に頑張ることを

自分に誓ったのです。

 

 

K学院を目指して早くから

通塾していた生徒たちの中で

S君の成績は

ビリに近い状態でしたが、

 

 

 

この塾で勉強するのが

夢だったというだけあって

勉強ぶりには

目を見張るものがありました。

 

 

1冊しかない参考書が

ボロボロになるまで勉強し、

私もまた、他の生徒に気を使いながら、

こっそり彼を呼んで

夜遅くまで個別指導にあたりました。

 

 

すると約2か月で700人中

ベストテンに入るまでになったのです。

 

 

まさに信じがたい伸びでした。

 

 

S君はそれからも猛勉強を続け、

最高水準の問題を

こなせるようになりました。

 

 

K学院の入試も終わり、

合格発表の日を迎えました。

 

 

私は居ても立ってもいられず

発表時刻より早くK学院に行き、

合格者名が貼り出されるのを待ちました。

 

 

真っ先にS君の名前を

見つけた時の喜び。

 

 

それはとても言葉で

言い尽くせるものではありません。

 

 

「S君に早く祝福の

 言葉を掛けてあげたい」

 

 

そう思った私は

彼が来るのを待ちました。

 

 

しかし1時間、2時間たち、

夕方になっても姿を見せません。

 

 

母親と一緒にやって来たのは

夜7時を過ぎてからでした。

 

 

母親の仕事が終わるのを

ずっと待っていたようでした。

 

 

気がつくとS君と母親は

掲示板の前で泣いていました。

 

 

「よかったな。これでおまえは

 K学院の生徒じゃないか」

 

 

我がことのように喜んで

声を掛けた私に

彼は明るく言いました。

 

 

「先生、僕はK学院には行きません。

 公立のT高校で頑張ります」

 

 

私は一瞬「えっ」と思いました。

 

 

T高校も高レベルとはいえ、

K学院を辞退することなど

過去にないことだったからです。

 

 

しかし、その疑問は

すぐに氷解しました。

 

 

S君は最初から経済的に

K学院に行けないと分かっていました。

 

 

それでも猛勉強をして、

見事合格してみせたのです。

 

 

なんという健気な志だろう。

 

 

 

私はそれ以上何も言わず、

S君の成長を祈っていくことにしました。

 

 

この日以来、

S君と会うことはありませんでしたが、

3年後、嬉しい出来事がありました。

 

 

東大・京大の合格者名が

週刊誌に掲載され、

その中にS君の名があったのです。

 

 

「S君、やったなぁ」

 

 

私は思わず心の中で叫んでいました。

 

 

「一流たちの金言2」

藤尾秀昭
_____________

 

 

Sくんの頑張り、

それを支え続けてこられた

お母さんの愛ももちろんですが、

 

 

 

『しまった…』

 

 

 

という後悔の気持ちを

大切にしながら、

S君の未来を信じ続けた

この先生の生き方に

胸が熱くなる思いでした。

 

 

 

 

先日、私の元に一通の

メッセージが届きました。

 

 

『ヒロさん、ぼく

 結婚することになりました…』

 

 

初めて彼に出会ったのは5年前。

35歳の時に鬱で会社を辞め、

自暴自棄になって

毎日自殺を考えている時、

親御さんのご縁で

私のコーチングと

カウンセリングを受けて下さいました。

 

 

僕には価値がない、

僕には生きる資格がない、

繰り返しそう話す彼と、

少しずつ少しずつ

心を通わせながら

連絡を取り続けてきた日々。

 

 

立ち直り、私の紹介で

素晴らしい社長さんの

経営する会社に再就職して

現在は役職を任されています。

 

 

自信をつけ新たな人生を

歩んでいる彼に、

天使が舞い降りました…(^^♪

 

 

嬉しかった…

 

 

相手よりも、

相手の可能性を信じる。

 

 

私はそんな、『コーチカウンセラー』

という仕事が大好きです。

 

 

どうか今日も素晴らしい一日を。

いってらっしゃい(^^♪

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA